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    対診に来てくれた練吉のことを気にかけているのだつた。

    と、房一は自然と紅黒い顔をひきしめた。相沢は随分永い間、それこそ房一がうんざりするほど永い間こつちをのぞきこんでいたが、

    「先生、どうしなさる?着て行きますかい」

    うまい工合だと感じた房一はすかさず云つた。

    この廃坑は旧幕時代の末頃まではまだ採掘されていて、これあるがために河原町は当時幕府直轄の天領となつていた。そして、上流にある城下町の藩主が参勤の途上この河を利用して下る時、天領との間に何か紛争の糸口のつくのを憚はゞかつて、河原町の傍を通る間は舟に幕をはり、乗組の者は傍見をして下つたと云ふ。それほどであつたから、この領内の民は他領との縁組を嫌ひ、他領から移り住む者を許さなかつたし、狩猟とか交通とかその他様々な点で非常な横暴と特権とを許されていたものだつた。

    「それあ、いかん。こんなに多くはいらんよ」

    「さうだ、鍵屋の法事へ行くんでね。さつきは、君にさう云ふのを忘れていたが――まあ、上りたまへ」

    「おい、やつは所長だぜ。まだ新任で、来たばかりなんだ。――行かう!」

    「きさまか、鬼倉ちふのは」

    房一は熱心に愛想よく椅子をすゝめた。

    「うん、寄りがあるからな、あんたはうちに帰つとんなさい」

    「さうだ」

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