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「あゝ、さうか。あゝ、さうか」
「すみましたよ。さあ。何でもありませんなあ。ぢき起きられますよ。ごく軽いんですからね」
「どうだ。起きられるか」
「患者さんですよう」
看護婦がそつと上つて来た。
「それあきまつてる、猟銃だもの」
心中もその宿を出て、近所の海岸から入水するか、山や森へ入り込んで劇薬自殺を企てるたぐいは、旅館に迷惑をあたえる程度も比較的に軽いが、自分たちの座敷を最後の舞台に使用されると、旅館は少からぬ迷惑を蒙こうむることになる。
盛子は時々半ば無意識に呟いた。
さう云ひながら一寸横目で自分の膝のわきに据ゑたずつしりと厚味のある榧かやの碁盤を眺めた。
「入りましたよ。それがねえ、穴の中は苔が生えたやうな、水たまりもあつてね、やつとこさ奥まで行つてみたんだが、まはりの土はぼろぼろ落ちるし、何のことはない洞穴でさあね、――それでも連中はあつちこつち突ついてみてたがね、含有量はまあもつと試掘してみなけりや判らんさうですよ」
と、房一は帽子を手にやつた。
「ふん。何でもありやせんよ。大方、腹でも痛かつたんだらう」
これはちっとも可笑おかしくない!彼ら二人は実にいい夫婦なのである。